映画

『この世に私の居場所なんてない』感想 後ろ向きなタイトルの奥に光る個性!

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■□ 9点
【あらすじ】
看護助士のルースは日々生きづらさを抱える孤独な独身女性。
ある日彼女の自宅に空き巣が入り、家族の大事な形見を盗まれてしまう。積もり積もった不満を爆発させた彼女は、変わり者の隣人と一緒に犯人捜しに乗り出す!

こんな題名の映画誰が観るんだよ!とつっこみたくなりますが実は知られざる傑作。2017年度サンダンス映画祭でグランプリを受賞したのも納得の尖ったクライムドラマでした。

前半は主人公ルースの抱える日々のプチ陰鬱エピソードが訥々と語られていきます。でも不景気な印象は無く、適度なユーモアを交えつつクスッとできる「あるある話」にまとめているところが上手です。
それでいて終盤に待つのは怒涛のバイオレンス展開。そこらの映画じゃそうそうお目にかかれないレベルの凄まじい人体破壊描写です。このギャップが凄い。
しかしその現場でも本気出したマーライオンのようにゲロを噴射する奴がいたりしてユーモラスな雰囲気が途切れないのが素敵。
シンプルに言ってしまえば凄く独特の雰囲気のある映画です。

怪人イライジャ・ウッド

社会に爪弾きにされた人物ってキャラ描写のさじ加減が難しい気がします。
良く描き過ぎると「実際の低所得者層はこんなにキレイじゃねーよ」とリアル感を損うし、汚く描き過ぎると人物としての魅力が死ぬ。

ブロマイド写真★イライジャ・ウッド/紫襟アップ
そこへ来ると本作のイライジャ・ウッドは見事なキャラ造形です。
ほとんど義侠心オンリーでルースに協力してくれるイイヤツである反面、ヌンチャクや手裏剣で武装し俺ジナル感あふれる格闘技を自慢気に披露するその様は完全にイタイ奴。
胡散臭い神父に傾倒しているという設定も『トゥルー・ディテクティブ』などで描かれる低所得者層白人(いわゆるホワイトトラッシュ)の傾向と合致しており、説得力ある要素です。
こんな感じでアメリカの社会事情を一人で体現しつつ、トータルではすこぶる魅力的なキャラに仕上がっているのはイライジャ・ウッドの演技力ゆえでしょう。フロド・バギンズ以来意図的に変な役ばっかり引き受けている感の強いイライジャですが(『マニアック』とか)、今作の彼はその中でも異彩を放つ存在です。
ラストカットは彼のせいでまさかの涙でした。
 

※ ネタバレ警告※ 
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

これは現代版『タクシードライバー』なのか

ところで町屋智浩さんが『サイゾー』誌に載せていた本作の論評が面白かったです。
いつもながらアメリカの文化…それもニュースにも雑誌にも出てこないような知られざるド田舎の現状に絡めた奥深い講釈にはホンマ感服させられます…。

町屋さんは本作のルースを「孤独と貧困の中で被害者意識を募らせ、自分こそ神に選ばれた復讐者だと思い込む」いわば現代版『タクシードライバー』のトラヴィスだと断じています。町山さんらしい鋭い解釈だと思います。

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確かに本作は負け組映画の金字塔『タクシードライバー』にそっくりです。低賃金の代名詞のような職業に就き、恋人も友人もおらず日々鬱屈した生活を漫然と送る主人公…そしてラストは血みどろ大虐殺。本当にトラヴィスにそのものじゃん!Σ(´∀`;)
「手首から先が吹っ飛ぶ」描写も『タクシードライバー』のオマージュだったかも知れません。
とにかく言われるまで気づきませんでした。町山さんは凄えなあ…!
でも「神に選ばれた復讐者」はどうなんでしょう。
別にルースは空き巣犯に復讐したかった訳ではありませんでした。誰かを傷つける気など毛頭なく、盗品商のジジイに怪我させたときなんかむしろ謝ったりしてます。トラヴィスみたいに振り上げた拳の落としどころに迷う感じは全然ありません。
ルースはただ人が人を軽視してどんどん貧しくなっていく社会全体に嫌気がさしていただけです。それはラスト近く、強盗にブチ殺されそうになる人質の身代わりとなって躍り出るシーンで証明されます。
別段ルースは自己犠牲をいとわないような英雄的人物ではありません。ただ単に人が酷いことをするのを(されるのを)これ以上見たくなかっただけなのです。
能力も信念も無いけど「なあ皆もうちょっと他人に優しくなろうよ!」という気持ちを体現するルースはこの映画の主張の核です。
それはむしろ「底辺の恨みを思い知れ!死ね!」という結論に到達したトラヴィスとは真逆の、貧しくたって人間は素晴らしいと謳う無邪気な人間肯定が垣間見えると思いますが…どうでしょう町山さん!

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