おすすめ度
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■□ □ □ 7点
【あらすじ】
長兄が出兵先の戦争で戦死し消沈するピーターソン家。
そんな家族のもとに長兄の親友を自称する青年デヴィッドが現れる。端正な容姿と洗練された振る舞いにすっかりほだされ、一家は彼をあたかも昔からの知り合いのように受け入れる。しかしそんな彼をある組織が追っていた…。
突然ですが『美女と野獣』実写映画化に際しエマ・ワトソンが「美女」として出てきたらもうひれ伏すしか無い訳です。エマ・ワトソンじゃあなあ。まごうことなき「美女」だしなあ。
しかし「野獣」はどうでしょう。いったい誰が適任か?
お、ルーク・エヴァンスか!確かにイケメンだもんね、ってお前がダストンの方かい。じゃあ肝心の野獣は誰…え?ダン・スティーブンス?ほんとに誰やねん。
という訳で見定めてやろう新野獣シリーズ第1弾。くだんのダン・スティーブンス主演作である『ザ・ゲスト』を観てみました。Netflixで見放題だし。
面白かったです。
新進気鋭のスリラー監督!
監督はアダム・ウィンガード。スラッシャー映画と見せかけて途中から被害者側が殺人鬼側を狩り始める快作『サプライズ』で人気を博しました。
本作も『サプライズ』同様、攻守が途中で入れ替わる脚本の妙を味わえます。「窓枠を越える瞬間、人は無防備になる」という演出や、ラストシーンに最後の一捻りを持ってくる構図も『サプライズ』譲りですね。
アダム・ウィンガードはNetflixオリジナル版『デス・ノート』にも抜擢され期待を集めています。今後要注目ですね!
超絶イケメン現る
本作はとにかくデヴィッド役のダン・スティーブンスが超イケメンでなければ話が成立しないのが最大の特徴です。
「死んだ戦友からの伝言を伝えるために伺いました」と慇懃に自己紹介するデヴィッドですが、そもそもその話を裏付ける身分証明書や第三者の話が何も登場しません。問い詰められると「いやあ…特殊部隊だったからその辺は機密なんですよね」っていくら何でも怪しすぎるだろ!
しかしピーターソン家はあっさり彼を信用し、しかも家に居候として住まわせてしまいます。このデヴィッドの強力な「人たらし」っぷりに説得力を与えているのがダン・スティーブンスのイケメンっぷりという訳です。デヴィッド役がスティーブ・ブシェミとかだったらそもそも家に入れてくれないでしょう。映画終わってしまいます。
とは言えいくら超イケメンでもさすがに当初は若干警戒される彼。しかし、
お母さんは礼儀正しい好青年っぷりにメロメロ。
お父さんも理想の飲み仲間ができてニコニコ。
弟くんはいじめから助けられてキュンキュン。
お姉ちゃんはバッキバキの大胸筋&腹直筋にドッキドキ。
と一人ずつたらしこんでいくんですね~。家族を失った人間の心の隙間をものすごく上手に突いてくる訳です。
もちろん映画は「みんなず~っと幸せに過ごしましためでたし×2」では終わりません。後半に向けてアダム・ウィンガード節が炸裂します!
※ ネタバレ警告※
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!
『ザ・ゲスト』の顛末
デヴィッドは実は「壊れたジェイソン・ボーン」でした。政府の行った強化兵士プロジェクトの弊害で精神に異常をきたし、自分を追う者や自分の正体を知る者を自動的に抹殺するようにプログラミングされている狂気の強化人間だったのです。
正体を隠し政府から逃げ回っていた彼ですが、ピーターソンさん家のお姉ちゃんこと
アンナが彼の正体を疑って色々探ってみたのが運の尽き。彼の自己防衛プログラムがビビッと反応し、町中の人間を巻き込む血みどろ大惨事が幕を開けます。デヴィッドを追ってきた政府の傭兵も全員返り討ちに。
アンナが彼の正体を疑って色々探ってみたのが運の尽き。彼の自己防衛プログラムがビビッと反応し、町中の人間を巻き込む血みどろ大惨事が幕を開けます。デヴィッドを追ってきた政府の傭兵も全員返り討ちに。
最終的にはアンナと弟くんだけ残りますが、機転を利かせた一撃でなんとかデヴィッドを倒します。
事件は終わった…と思いきや、町の混乱と喧騒からよろめきながら離れていく怪しげな人影がひとつあるのでした。
デヴィッドのサイコパスぶりがキレッキレ!
実はピーターソン家の死んだお兄ちゃんもデヴィッドと同じ強化兵士プロジェクトの被験者でした。嘘ついて家族に接近したデヴィッドでしたが「死んだ戦友に代わってその家族を守る」と言う点は本当だった訳です。「彼の中」では。
だから弟くんをいじめていたチンピラを半殺しにしたり、父親の昇進を阻む上司を暗殺したりと彼なりのやり方で本気で家族を守っていたのです。
でもひとたび邪魔だと判断するや「本当にすみません!」と言いながら今度は逆にピーターソン一家を皆殺しに。
普通に考えれば真逆のベクトルなのに、デヴィッドの中では「本当は守りたいけど仕方ないね。殺すね。」という考えが矛盾なく存在している点が怖い。
銃撃戦の切れ味
ジャンル的にはサイコスリラーに相当するであろう本作ですが、傭兵部隊vsデヴィッドの銃撃戦シーンは見応え抜群。そんじょのアクション映画を凌駕する迫力です。
特にデヴィッドが最初の一発を撃つシーンが秀逸。
洗濯物が並んで干されている家の庭で傭兵部隊がピーターソン夫人に詰め寄ります。
傭兵「彼は!?彼はいまどこに居る!?」
夫人「え…?ついさっきまでそこにいましたけど...」
その場の全員が振り返るとその視線の先、はためく洗濯物の陰からダン・スティーブンス登場。スローモーションで銃を引き抜くや、虚を突かれて隙を見せた傭兵を容赦なく射殺します。
めっちゃくちゃカッコいい!
デヴィッドの冷酷さと戦闘能力の高さを同時に伝えつつ、ここまで「何かが起こりそうで起きない」状態を引っ張ってきた緊張感が一気に解放されます!
アダム・ウィンガード監督の確かな実力が伺えます。これはNetflixオリジナル版『デス・ノート』も(全然興味なかったけど)期待できそう!