突然ですが『オクジャ/Okja』超楽しみです。
本作を皮切りに「ストリーミング配信動画は果たして映画と呼べるのか!?」を巡る大論争が勃発しました。
カンヌ映画祭では上映一時中断という嫌がらせを受け、ホームである韓国ですら上映拒否されるという憂き目に遭った 『オクジャ/Okja』 。何かと話題に欠きません。
しかし一連の騒ぎが無くても 『オクジャ/Okja』 は実際超楽しみです。
何と言っても当代最高の鬼才ポン・ジュノ監督の最新作!これが燃えずにいられりょか!!
この機に彼の監督作品の中でも特に大好きな作品たちを振り返ってみたいと思います。
映画秘宝では00年代映画ベスト1位に選出されていました。ポン・ジュノ監督の代表作にして刑事ドラマの珠玉の傑作です。
映画自体は完全にフィクションですが、反政府勢力の抑圧に忙殺されて治安維持がおろそかになっていた1980年代当時の韓国の情勢がバックボーンに描かれます。本作をはじめポン・ジュノ監督作では、こうした「時代」や「政治」や「制度」など個人ではどうにもならない社会の構成要素のせいで不幸な目に遭っていく弱者が繰り返し描かれています。
暗いテーマの一方でユーモラスな側面も印象的な本作。特に田舎刑事を演じるソン・ガンホが面白い。
「被害者女性は暴行されていたのに、現場には一本の陰毛も見つからなかった…。そうか、分かったぞ!犯人は陰毛が生えていないんだ!!」と息巻き、犯人を捜して近所の銭湯に足しげく通います。そしてふやけます。正気か。
ラストシーンの視線の意味など、解釈が分かれる要素もふんだん。誰かと語り合いたくなること請け合いです。
必見!Netflixで配信中!Huluでもいけるぜ!
2008年『グエムル 漢江の怪物』
前作とは打って変わっていきなりB級モンスターアクション路線に。この節操の無さが凄いです。しかもただのジャンル映画に留まらず、本作でもポン・ジュノ節をブイブイ言わせます。
主演はソン・ガンホ続投。娘のためなら頭蓋骨ドリルもノーダメージ。
異様な存在感を誇るお姉ちゃんペ・ドゥナも出るよ!
悪いのは全部米軍!と言わんばかりの語調なので、これ一本だけ観たら「韓国人は在韓米軍をずいぶん嫌ってるんだなあ…」と思う所です。しかし実際はポン・ジュノ流の「皺寄せを食うのはいつも弱者」という一貫したテーマの一側面であり、別にアメリカだけがどうこうと言いたい訳ではないでしょう。
実際、アメリカ軍の対となって描かれるよく分からない市民団体も騒ぐだけ騒いでおいて事態の解決には一切寄与しません。主人公たちはそのはざまで翻弄される形です。
実際、アメリカ軍の対となって描かれるよく分からない市民団体も騒ぐだけ騒いでおいて事態の解決には一切寄与しません。主人公たちはそのはざまで翻弄される形です。
虐げられし弱者の目線で語られる本作。しかもソン・ガンホたちには虐げられているという自覚すら無い悲喜劇。狂騒のはてに突き付けられる衝撃のラストはポン・ジュノでなければ描けなかったであろう凄まじさです。
ジャケットだけ見たら凄くバカバカしい映画に見えるし実際バカバカしい要素も多分に含みますが、観るものの心にドスンと響くインパクトがあります。
これもNetflixでもHuluでも観られるよ!おすすめ!
2013年『スノーピアサー』
「スノーピアサー」では先頭車両ほど裕福な支配層が居住し、後続車両に行くほど貧困な被支配層が劣悪な環境で何とか生きていた。虐げられてきた者の未来を拓くため、最後尾車両で一人の男が立ち上がった!
今度はポン・ジュノ、いわゆるポストアポカリプスものに挑戦!
一作ごとに全然題材が違うのに、実際観てみると「社会に抑圧される弱者」や「バイオレンス描写の合間のブラックユーモア」など、まごうことなきポン・ジュノ印の要素がオンパレード。これが作家性だ!
一作ごとに全然題材が違うのに、実際観てみると「社会に抑圧される弱者」や「バイオレンス描写の合間のブラックユーモア」など、まごうことなきポン・ジュノ印の要素がオンパレード。これが作家性だ!
我らがキャプテン・アメリカことクリス・エヴァンスがダーティなヒーロー像に挑んでいます。ダーティもダーティ、劇中「俺さあ、前に空腹で死にそうになったとき○○を殺して食べたんだよね」というドン引きにも程がある衝撃発言を披露します。このセリフをキャップに言わせる所がもうポン・ジュノ一流のギャグです。
そして相棒役はやっぱりソン・ガンホ。ガンホ三連発。他の登場人物が「裕福な支配層を引きずり下ろす」という革命に奔走するなか、彼だけその先を見ています。相変わらずの凄い存在感です。
しかし本作で存在感を語るならティルダ・スウィントンは外せません!怪演が冴え過ぎて観客をムカつかせるためだけに存在するクリーチャーと化しています。特に口元がキモイですね!(褒め言葉)
『グランド・ブダペスト・ホテル』しかり、美人なのになぜこんな役ばっかり引き受けるのか。もっとやれ!
本作もNetflixで観られます!
2009年『母なる証明』
上の三作品はNetflixやHuluで簡単に観られるのに、本作だけは主だった動画サービスのどこでも配信されていません。そ、そんなバカな!?この最高傑作をみんなスルーしてるのか!?
本作、もう格が違います。
どんなサスペンス映画よりも衝撃が強いです。私の中でポン・ジュノ監督が特別な存在になっているのは一重に本作の存在のせいです。いや他作品も凄いんだけど、特にね。
どんなサスペンス映画よりも衝撃が強いです。私の中でポン・ジュノ監督が特別な存在になっているのは一重に本作の存在のせいです。いや他作品も凄いんだけど、特にね。
犯人は誰だ!?というサスペンスとして観ても抜群に面白いですが、それ以上に人生観や個人の価値観などに深く訴えかけてきます。
人間誰しも、自分であることから逃れられない。本作の肝っ玉母ちゃんもまた、母親であることからは逃れられません。
人間誰しも、自分であることから逃れられない。本作の肝っ玉母ちゃんもまた、母親であることからは逃れられません。
その真理をあまりに予想外過ぎる展開で表現したラストシーンは、もはや映画のワンカットであるという意味を越え観る者に深い傷跡を残します。
これぞ傑作と呼ぶのにふさわしい破格の作品です。
頼むよNetflix!『オクジャ』推すならこれも押さえてよ!
(※追記:2017年7月に追加されました)
どうなる
『オクジャ/Okja』!?
予告編を見ると
ブタともカバともつかない珍獣が幼女と仲良く暮らしている
→悪いお金持ちが珍獣を拉致
→取り戻すために都会に乗り込む幼女
→そこへ怪しげな動物愛護団体が絡み
→どんどん大事になる
ような流れが見て取れます。
どうやら珍獣は食用として抜群の経済的価値があるもよう。そのキャンペーンのわざとらしさったら『スノーピアサー』の「教室で楽しくお遊戯シーン」を彷彿とさせます。ティルダ・スウィントンもノリノリ。
でもポン・ジュノのことだから、少女が珍獣を取り戻してもとの生活に戻れたよめでたしめでたし!には絶対ならないだろうと思われます。
たぶん
たぶん
① 幼女の無垢な熱意が大惨事を引き起こす
② ティルダ・スウィントンは滅茶苦茶ひどい死に方をする
③ 悪いのは大企業かと思ったら動物愛護団体の方が輪をかけて胸糞
あたりの一筋縄ではいかない展開が用意されてるんじゃないかな!?
あーもう待ちきれないぞう!!