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『デビルマン クライベイビー/DEVILMAN crybaby』感想 滅びよ人類!

2018年1月6日

■■■■■■■■■□  9点

【あらすじ】
気弱な男子高校生の不動明は幼馴染で親友の飛鳥了に誘われ、人類を陰からおびやかす「悪魔」の調査に乗り出す。
しかし思わぬアクシデントで明自身が悪魔と一体化。人間の心と悪魔の肉体を併せ持つデビルマンとして覚醒してしまう。

DEVILMAN crybaby Original Soundtrack

2017年の夏頃からNetflixが猛烈にプッシュしていた期待作『デビルマン クライベイビー』がついに配信されました。

 

近年『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』などの可愛らしい作品で好評を集めている湯浅政明監督が、あろうことかバイオレンスの極北たる『デビルマン』に挑戦してしまったという本作。
例えるならば登場人物が全員ムーミンになったマッドマックスみたいなものです。そんなの上手くいくのか!?
しかも予告編はデビルマンらしさよりも先に湯浅監督らしさが爆発しており正直コレジャナイ感が強い…。

 

まあ…。せっかく配信されたしあんまり期待せず取りあえず観てみようかな…とえっちら見始めてみたらこれがもう凄くて。
凄くて凄くて一気に全話観ちゃいましたよ。もう凄くて(語彙)。

 

結論を先に書けば全Netflixユーザー、全アニメファンが真っ先に観るべき超傑作でした。

 

 

そもそもデビルマンって?

あ・れ・は 誰だ 誰だ 誰だ♪
あ・れ・は デビール
デビルマーン♪
デビルマーン♫

デビルマン VOL.1 [DVD]

というテーマ曲がある意味作品自体より有名な1972年のアニメ版『デビルマン』。
この作品の存在感がとにかく大きいので、私は長いことデビルマンをいわゆる変身ヒーローものだと思ってました。

 

しかし実は永井豪による原作は全くの別物。タイトルと一部の設定が共通しているだけで、完全に違う作品なのです。
というか私と同じく、デビルマンをガッチャマン的な子供向けヒーローアニメだと思ってる人は地味に多いと思います。あの曲が耳に残るからいけないんだ(;^ω^)!

 

まあそれはさておき。
私が原作版『デビルマン』に出会ったのはかれこれ十数年前、高校生の頃でした。
古本屋で何の気なしに手に取った『デビルマン』の1巻がもうとにかく強烈なインパクトで、すぐ全巻(と言っても5冊)買って家で貪り読んだのを覚えています。

 

そこにはイメージしていた子供向けヒーローものの要素はまるでなく、あるのは永井豪の魂の叫びでした。
主人公たちを待ち受ける過酷過ぎる運命。
情け容赦ない残酷描写。
そして超キモいサイコジェニー…。
終わり方の突き放しっぷりも鮮烈でした。

 

高校生当時、観てきた映画・読んできた小説やマンガの多さに多少の自信を持っていた私は「ま、俺って結構そのへん詳しいし?」みたいな具合で勝手にイキッてましたが、完膚なきまでに打ちのめされました。
こんな凄い作品が自分が生まれる10年以上前に世に出ていたなんて…!
あげくそれを今日の今日まで知らないでいたなんてー!

 

以来『デビルマン』が私の中で特別な存在になったのは言うまでもないことでした。
もし永井豪版『デビルマン』を未読の方がいれば、こんなブログはどうでもよいので今すぐ読破するのをおすすめします!

 

 

配信作品の強み、エロとグロのリミッター解除!

現代に再構築される神話

という訳でそんな凄すぎる『デビルマン』を45年越しに映像化した今回の『クライベイビー』。

 

舞台を現代に移し、SNSや動画配信などのツールが自然に話に取り込まれています。
そして登場人物の設定も大胆に改変。キャラクターデザインも今風に刷新され、特に女性陣のとても可愛らしくリファインされており、永井豪らしいゴツさは微塵も残されていません。

 

そのくせ話の本筋は原作に極めて忠実!
この噛み砕き→再構成の妙は原作に対する深い理解と愛情あってこそ…まずコレが凄いです。

 

実は『デビルマン』自体は何度も映像化されている作品なのに、原作を「最初から最後まで」描き切った作品は実はこの『クライベイビー』が初なのです!
本作がコンセプトからしていかにチャレンジングな作品か分かります。

 

 

見た目は抽象的だが

夜明け告げるルーのうた

予告編観た時点では「湯浅政明の抽象的な演出は『デビルマン』のハードで暴力的な世界観にそぐわないのではないか」と心配していましたが、第1話のサバトパーティーのシーンでおっぱいがビヨーンと伸びて人間を食いちぎった時点でそんな心配は吹っ飛びました。

 

キャラも空間もめちゃくちゃ自由に動かしてます。
「世界観にそぐわない」どころか好き勝手してます。これが非常にうまい方向に働いてる!

 

抽象的さは逆に「きっちりしなきゃいけない」という制約から作品を開放しており、むしろイマジネーションの赴くまま人体を変形させたり破壊したりでやりたい放題です。
正直言って私は湯浅監督の画が大好きという訳ではないのですが、作品のコンセプトとがっちり噛み合っている点は認めざるを得ません。
返り血を浴びながら咆哮するデビルマンは素直にド迫力!

 

しかも配信作品の強みを活かしてエロとグロをどちらも真正面から描きまくってます。
もう普通にセックスしてます。女子高生は獣のような声をあげて自慰をし、男子高生は男同士でガッツンガッツンです。

 

そして暴力シーンではもれなく血とモツが飛び散り、ヒロインを待ち受ける原作の「あのシーン」も完全再現されています。
これは絶対地上波では放送出来ない…。

 

デビルマンと真正面に向き合うつもりならエロ&グロは避けられない要素。
その事実から逃げず逆にNetflix配信作品という武器を得て真向立ち向かった本作『クライベイビー』は、今後のアニメの新たな基準になり得るパワーを秘めていると思います。
いずれにせよ超おススメです!

 

 

※ ネタバレ警告※
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

 

 

泣くことが出来る悪魔 不動明

天井がドロドロになる程のダイナミックな夢精で目覚める男、不動明。
本作は「泣くこと」と「走ること」がキーワードでしたが、明はその両方を内包する紛れもない主人公でした。

 

泣くことは人間性の象徴。人のために泣くことは優しさが成せる業で、人間と悪魔を分かつ最大の要素なのです。
そして走ることは生きること。了は「ただ走るだけだったら人間は獣に劣る」と一蹴しますが、人間は走ってバトンを渡すことができる=想いを誰かにつなぐことが出来るというメッセージでした。

人間と悪魔でその走り方の見た目が全然違うというのも明快な表現ですね。
こういう絵的な演出で分かりやすくテーマを語ることができるので、やっぱアニメはいいですなぁ(*'▽')

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ただ一点。
原作では牧村美樹の死で完全に人類を見放し、以降は人間でも悪魔でもない存在として戦った明ですが、本作では最後まで自分は人間であると主張していました。

 

しかしその割には了に対して「お前のために流す涙は枯れ果てた!」と言っており、泣くことが人間性の象徴であるというそれまでの主張とちぐはぐです。
「泣かない」イコール「人間やめた」と定義してくれた方がより明快だったかなー…と思わんでもない。

 

 

史上最悪の運命のヒロイン 牧村美樹

もうめっちゃ可愛い。
個人的には10三葉=1美樹くらいです。ちなみに1.73三葉=1瀧。

君の名は。 宮水三葉 1/8スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

(あ、これは三葉の方だ)

 

そしてこんなに可愛いのにおっぱいも陰毛も惜しげなく披露するきっぷの良さ。配信作品最高ォォゥ!!

しかしやはりなんと言っても第9話でしょう。
「泣くこと」は人間性の象徴だということを主張したがために悲惨な末路を辿ってしまうという顛末は、人間なんてその程度とさげすむ了の主張を裏付けてしまいました…。心が大出血する悲劇です。
明の必死の訴えにリンチをやめた暴徒も登場しましたが、そんな善性がちっぽけに思えるほど人間はドス黒いようです。

 

そして潘めぐみ渾身の断末魔は確実に見る者の心に爪痕を残します
その直後に押し寄せる特殊エンディングが更に絶大なインパクト。

静謐で美しいシークエンスで美樹と明の幸せな時間を強調しつつ、同時に失ったものの大きさが饒舌に語られる…。
印象的な楽曲の効果も合わさり、こちらの傷口をゆっくり押し広げられていく珠玉の演出でした。

 

本作の中核を成す珠玉の神回でした。トラウマ級衝撃の看板に偽り無しです。

 

 

明以外はどうでもいい 飛鳥了

ツーブロックヘアーに大胆アレンジされた飛鳥了。
明以外の人間は雑草ほどにも気に掛けていないという隠す気ナシのサイコパスぶりが素敵でした。人間を「いる」じゃなくて「ある」と表現したりします。

 

最終話でミーコ→美樹→明と渡ってきたバトンを、意味が分からずに何度も取り落とすシーンが印象的。
それでも最後の瞬間には自分と明との間に愛を見出していました。

原作ではラストシーンでの了の感情は推し量れませんでしたが、本作は明快な回答を与えてくれます。この点は個人的に原作より好みでした。

 

終わってみればこれは了がcrybabyになるまでの話でしたね。このラストシーンのおかげで明と美樹の死に意味が与えられ、希望を持たせる幕引きになっています。

 

 

ある意味第二の主人公 ミーコ

原作から大幅に設定改変され、本名が牧村美樹と同じ「ミキ」であることも判明した第二のヒロイン。
というかキャラの掘り下げっぷりからは第二の主人公と呼んでも差し支えないほどの存在感でした。

 

美樹につきまとうグラビアカメラマンに犯されるが実はまんざらでもなく、むしろそれをオカズに自家発電…って性豪すぎるだろ!

 

美樹への対抗心から一時自分を見失うも、美樹を許し自分を許すことで最後には涙(=人間性)を取り戻していました。
やっぱり「自分の弱さを受け入れる」って普遍的なテーマだと思うので、極端な善人である不動明や美樹と違って等身大の人間として非常に共感できましたね。
似た立場ながら自分と向き合えなかった幸田と対になっているのも見事な構図です。
ぶっちゃけ本作一番のお気に入りキャラです。

 

しかしなぜククンを殺した
いや実際に殺すシーンは無かったけど、前後の状況的に殺して食ったとしか思えない…。
デビルマン化して自信に満ち溢れたから、弱かった頃の自分=ククンはもう要らないってこと? だとしたらいくら何でも残忍な…。
銃で脅して襲ってくる汚いオッサンは殺してもククンは殺しちゃダメだろー。
ちょっとこれだけは受け容れられないです…。

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