海外ドラマ

『このサイテーな世界の終わり』感想 荒ぶる厨二病!傷ついた少年少女の逃避行








■■□ 9点
【あらすじ】
人を殺したくてしょうがない自称サイコパスのジェームズ。
家庭にも学校にも居場所が無く、激しい性格をもてあますアリッサ。
意気投合した(?)二人は無理解な親を捨て、非日常への逃避行を開始する。
異色の青春ドラマ『このサイテーな世界の終わり』を紹介します。
まったくノーマークだったのですが予告編のセンスの良さにヤラれて一気見してしまいました。結論を先に申し上げればサイテーどころかサイコーでした!
ドラマシリーズながら1話20分×全8話なのでちょっと長い一本の映画と大体同じ尺というテンポの良さも嬉しい!

自分は特別だと信じたい主役たち

The End Of The F***ing World (Original Songs and Score)

主人公のジェームズ君は、自分はサイコパスであると信じ小動物を殺してイキがっている屈折した少年。もちろん本物のサイコパスなどではなく、誰もが一度は抱く「自分は特別に違いない」という思いをこじらせたいわゆる厨二病患者です。

父親を殴ってその車を勝手に乗り回すくせに、いざ車が事故ると「ああっ!父さんの宝物が!!」と動揺するエピソードに元々の人の善さが滲みでててかわいい。
ヒロインのアリッサもエキセントリックな性格をしてはいるけれど、実際は両親の愛に飢えた普通の少女。やたらと周囲に攻撃的だったり処女なのにセックスに興味津々だったりするのが寂しさの裏返しなのは一目瞭然です。
そんな「僕/私は特別な人間!」と思い込む二人のアイタタ感溢れる愛らしいキャラクターが面白おかしく描かれ、二人の家出で始まる物語がコメディタッチに幕を開けます。
が。
このあと二人が旅先で成長していくんだろーなーと期待して観ていたら、第3話でいきなり超展開に突入。厨二病ロードムービーだったのが俄然に悲壮感を帯びた現代版ボニーとクライド状態になっていきます。
そこから先の展開はまったく予測不能。二人の屈折のルーツも徐々に明かされていき、人間ドラマとしても重みを増していきます。そのくせBGMのセンスが抜群で、当初の軽快なユーモアも失わないブレなさが素敵。
まさに隠れた傑作です!
国内では海外ドラマ情報サイトですら全然話題になってない本作ですが、圧倒的に面白いのでぜひおススメ!短いし!

広告




 

※ ネタバレ警告※ 
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

ジェームズの成長

母親の自殺を目撃したトラウマに囚われていた彼。「僕はサイコパスだ。人間を殺したい」などと言う奇矯なフリで自分を守っていた訳ですね。
しかしアリッサとの関わりの中で本来の自分と向きあい、周囲に対して本当に無理解だったのは自分の方だったと認識していきます。それを象徴するエピソードとして、前半では小動物を殺しまくってたくせに後半では弱った犬にさえトドメを刺せなくなっていました。本当は平凡で気弱な少年なのですね。
そんなジェームズの父親もいい味出していました。
やたらと陽気に振舞い息子のガールフレンドにも初対面でオナニーの話を振るなど知性の低さが露骨だった彼ですが、それらは結局心の傷を抱えたジェームズにどう接していいか分からない気持ちの現れだった訳です。
アリッサの二人の父親と比べるとずっとマトモですが…その不器用さが結果的にジェームズを追い詰めたという悲劇。印象的です。

衝撃のラストシーン

それまで「母親の自殺」という悲劇に囚われ嘘の自分を生きてきたジェームズですが、旅路の果てに本当の自分を見出します。そして最後は自分の意志でアリッサを守り、罪を被ってひとりで逃走。結局武装警官に射殺されました。
いや、実際に射殺されたかどうかは分かりません。銃声とともに暗転してしまったので、はっきりしているのは「追い詰められて撃たれた」という事実のみです。
だから「実は生きてた!」という感じで続編を作ろうと思えばなんぼでも作れそうなのですが、正直この終わり方が好きなので是非ともSeason1で終わってほしいです。

ジェームズが殺人をはじめ数々の罪を犯してきたのは事実だし、そこはボニーとクライドよろしく何らかの落とし前をつけるべきです。それが「追い詰められて射殺エンド」なのか「逮捕されて刑務所エンド」なのか「奇跡的に逃げ切って今も逃走中ルート」なのかは観客の解釈でいいじゃん!と思う次第です。

何にしても非常に印象深いラストシーンでした。この余韻を価値あるものにしておくため、シーズン2は要らないと言いたい!でも作られたらきっと観る!複雑な気持ち!

広告




-海外ドラマ

© 2021 おふとんでシネマ