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祝アカデミー賞受賞!『シェイプ・オブ・ウォーター』感想 グロくて美しいデル・トロ流の美女と野獣

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■■■■■■■□□□ 7点

【あらすじ】
幼いころの傷が原因で声を出せない中年女性イライザは、掃除婦として勤務している秘密の研究所で「不思議な生き物(半魚人?)」と遭遇する。その生き物の純真さに心を動かされたイライザは、やがて種族の壁を越えた愛に目覚めていく…。

本当に『シェイプ・オブ・ウォーター』がアカデミー賞作品賞獲っちゃったー!怪獣映画なのに!
そしてギレルモ・デル・トロが初監督賞受賞ー!
全部で4冠!すげー!おめでとうございまーす.。゚+.(・∀・)゚+.゚ドンドンパフパフー
ギレルモ・デル・トロと言えば私にとって生涯ベスト級の名作『パシフィック・リム』や『パンズ・ラビリンス』を撮った凄い監督。そしてそのデル・トロが自分のクリーチャー大好き人生のルーツに真正面から挑んだのが最新作が本作『シェイプ・オブ・ウオーター』です!いわばデル・トロの集大成!
それだけで観なければならない理由は十分なのに、さらに批評家から圧倒的な支持を集めて賞レースを席捲していると来ればもう期待のボルテージはメガマックス!公開日に観ない訳にはいかない!!
…と言う訳で観てきた訳ですが『シェイプ・オブ・ウォーター』。
正直な感想を申し上げれば期待外れでした(´;ω;`)
脚本から音楽に至るまで何から何まで凄い完成度だと思うし、特に美術に至っては『パンズ・ラビリンス』にさえ迫る壮絶な存在感です。でも…ごめんなさい、乗り切れませんでしたー!!

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※ ネタバレ警告※ 
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

とは言えクライマックスからラストシーンにかけては本当に掛け値なしに感動しました。
特に「喉の傷」という同一の要素を使ったイライザ(サリー・ホーキンス)とストリックランド(マイケル・シャノン)の二極対比が見事。

壮絶な逃亡劇の果てに、半魚人は自分やイライザを繰り返し傷つけてきた悪辣なストリックランドの喉をかっ切ります。このとき「叫びたくても声が出せない」という状態にストリックランド陥る演出が素敵。あれだけバカにしていたイライザと同じ状態に陥って死んでいくのが皮肉です。
そして半魚人は重傷を負ったイライザを救います。イライザから声を奪ったと思しき喉の古傷がエラに変貌し、イライザが息を吹き返す…このシーンの美しさは本当に心打つものがあります。

ポスター/スチール写真 A4 パターン1 シェイプ・オブ・ウォーター 光沢プリント

誰だって愛し愛される資格がある!

同じ「喉の傷」を用いながら、かたや命を奪いかたや命を与える半魚人。これは彼が人間の生殺与奪を完全に握っている=人間以上の存在であるという事実を表現しています。そんな彼を時に「神」と呼ぶ人もいるけれど、本作中では敢えて神々しく描かれていないのがポイント。むしろお腹が減ったら猫を捕まえて頭からムシャムシャ食べる化け物です。
この描き方が凄い!デル・トロならではの着眼点です。
本作は徹頭徹尾『リトルマーメイド』や『美女と野獣』のようなメルヘンチックな異種間恋愛へのアンチテーゼになっています。人魚は人間になって幸せに暮らしました。野獣はイケメンになって幸せに暮らしました。ちょっと待て!人魚じゃ幸せになれないんかい!野獣のままじゃダメだったんかーい!!
そんな問いに対する真っ向からの回答が本作『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人の姿なのです。

美女と野獣 (字幕版)
この半魚人、見た目はかわいくない。むしろ猫食べたりしておぞましい面がある。相手役のヒロインもお姫様では決してなく、風呂オナニーを日課にしているおばちゃん。本作のカップルを構成しているのはディズニーが忌避するような徹底的に生々しい要素ばかりです。
でもそれでいい。それでも真実の愛に辿り着いた二人の姿はこんなにも美しい。これが本作のアイデンティティーです。
あのラストシーンには誰だってありのまま生きていいんだという力強い人間賛歌が伺えます。「誰だって」の「誰」の部分には人間として普遍的な要素が何でも入るでしょう。それこそ劇中でも触れられた女性差別や黒人差別のニュアンスもしっかり含まれるし、もしかしたらいわゆるLGBTも該当するかも知れません。
人外の化け物を描き切ることで逆に人間のすばらしさは違いを受け容れられる寛容さにあることを描き出し、その寛容さこそがなのだという主張に帰結させた『シェイプ・オブ・ウォーター』。
デル・トロ監督の構成力には心底脱帽です。

かわいくないよ半魚人

と言う訳で批評家受けが抜群に良いこと自体は納得しきりの『シェイプ・オブ・ウォーター』。本当に素晴らしい映画でした。
…でも私自身が今一つ乗れなかったのにはいくつか理由があります。
まず本作の主役とも言える半魚人ちゃんのビジュアルが全くもって魅力に乏しい
『パンズ・ラビリンス』のペイルマンほどおぞましくないし、『ゴールデンアーミー』の告死天使のような荘厳さも無い。と言うか同じ半魚人キャラとして『ヘルボーイ』のエイブの方がはるかに愛嬌があります。
これまでギレルモ・デル・トロが手掛けてきたあまたのクリーチャーに比べると全然魅力が無いのです。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人が敢えてカッコよく描かれない理由は前述の通りです。なのでビジュアル的にはこれで正解なのでしょうが、デル・トロだったらもっと凄いキャラが作れたのではないかと思わずにいられません。
映画秘宝のインタビューを読む限りでは本作の半魚人デザインこそ世界トップレベルの造形士達が総力を結集して誕生したこだわりの逸品…とのことですが、玄人好み過ぎて伝わらないよ!
『大アマゾンの半魚人』(1954年 ドイツ)さえ見てないシロウトは帰ってくださいと言うことなのでしょうか(T_T)シクシク

愛はどこまでセックスなのか

イライザと半魚人の愛を描くにあたって、二人の性行為を真っ向から描いたチャレンジングさも本作の評価を高めている大事なポイントでしょう。
しかし…それ描く必要あった?

「愛のあるところにはセックスがある」のは真実だと思いますが、「セックスが無ければ愛じゃない」とは全然思いません。
むしろセックスが介在しない絆の方がフィクションにおけるモチーフとしては魅力的だと思ってるので、そういうスタンスの映画の方が好きです。『レオン』とか。
でも本作と来たら最初から最後までセックスの話ばっかり
開始5分でイライザは威勢よくオナニーし始めるし、悪役のストリックランドに関しても重要な人物描写としてセックスシーンが出てきます。半魚人のどこにチン棒がついているのかもジェスチャーで説明してくれる親切設計。

イライザと半魚人のセックスシーンは情緒豊かに描かれますが、半魚人のアレがこうなってソレに入っていくのかと思うと正直「…オエー」です。
異種間だからこそセックス介在しなくてもいいじゃん…と思ってしまういち観客の私に対し、異種間だからこそセックスしなきゃダメだ!という結論に至ったデル・トロ監督。私にはその真意が汲み切れませんでした…。

シェイプ・オブ・ウォーター (オリジナル・サウンドトラック)
そもそもイライザが半魚人を愛したきっかけが良く分かりません。
喋れないイライザが言葉を持たない半魚人と自分との間に共通項を見出していく…という構図は理解できますが、そこに至るまでの道が全然無い気がします。
だって第一印象最悪じゃないですか!職場の上司の指を噛み千切ったケダモノですよ!いくら上司が便所の床に小便撒き散らすクズでも指食いちぎったらイカンでしょう!
そんな印象だから、イライザと半魚人が絆を深めていくパートも「イライザが卵で餌付けしている」もしくは「音楽やダンスの趣味を押し付けている」ようにしか見えず全然感情移入できませんでした。
そのうえで前述のセックス描写なので「私あの生き物を愛してしまったの!」と言われても保健所に収監されていた捨て犬をバター犬として調教して引き取ったぐらいの感覚に見えてきます。
それもこれも本作におけるセックスの位置づけがしっくり来ないからです…。
まさか怪獣映画でセックス観が問題になってくるとは思いませんでした。

歴史的傑作かも

と言う訳で乗り切れなかった『シェイプ・オブ・ウォーター』。
「幸せになるのは決まって美男美女」というディズニー的な欺瞞に対するアンチテーゼは既に『シュレック』という超名作が達成しているので、どうしても二番煎じ感が出てしまっているというのも本作のインパクトを薄めた理由の一つだったかも知れません。

シュレック (吹替版)

それでも人種・文化差別路線に時代が逆行していく昨今のアメリカで「違いを受け入れられるのが愛だ」と声高く主張する本作が作られたのは意義深い事実だと思います。賞レース独走状態はそんな政治的配慮が無かったとは言い切れないでしょう。
ある意味では現代という歴史の1ページを代表する一作なのかも知れません。何にせよ一見の価値はあります!

↑『シェイプ・オブ・ウォーター』特集記事が読み応え抜群。
デル・トロ監督のインタビューも面白いけど、半魚人の「中の人」ことダグ・ジョーンズの紹介記事が目からウロコでした。

↑デル・トロ監督の私設博物館『荒涼館』のガイドブック。
彼の独創性のルーツが垣間見えます。と言うか蒐集品が凄すぎる。

↑デル・トロ監督と言えばコレ!!
4K Ultra HDになって画質超美麗かつ動きヌルヌル!
このうえなくエルボーロケッツです!!





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