■■■□□□□□□□ 3点
【あらすじ】
近未来のベルリン。
幼い頃の事故が原因で喋ることが出来ない男レオは、恋人のナディーラと一緒につつましくも幸せな日々を過ごしていた。
しかしある日ナディーラが突如姿を消す。わずかな手がかりをヒントにナディーラの行方を追うレオは、やがて驚愕の真実に辿り着く。
Netflixで独占配信中の『ミュート/MUTE』を観ました。
本作の監督ダンカン・ジョーンズと言えば、まだキャリアは短いながら手掛けた映画が全て面白いという気鋭の天才。
奇想天外の設定が光る『月に囚われた男』は正統派SFとして文句の無い出来だったし、死に戻りアクション『ミッション8ミニッツ』は紛うことなき傑作です。『ウォークラフト』はちょっと話が散らかってた印象ですがそれでも大ヒットを記録しました。
そんなダンカン・ジョーンズが『ブレードランナー』風の近未来ノワールに挑戦したと来れば、それはもう期待せずにはいられない訳です。ってな塩梅でさっそく観てみました『ミュート/MUTE』!!
………なんじゃこりゃ。
結論から先に申し上げると、めちゃくちゃしょうもないです。観終わった瞬間に「うわあああ時間返してええええ!!」となった映画は久しぶり。どうしたダンカン。
物語は消えた恋人の足跡を追うレオと、ヤミ医者のカクタスの二人を軸に展開します。
が。
この二人の物語が終盤までまったくリンクせず、話がどっちに向かって進んでいるのか全然わかりません。そのくせ演出や会話が冗長なので「誰が」「何のために」「何をしているのか」が常にぼんやりしており全く感情移入できないのです。
さらにアクションシーンも無し。カーチェイスも無し。笑いの要素も無し。
すっごい退屈ーッ!!
本来その退屈さを埋めるのが近未来SF的なビジュアルだったはずですが…。
空飛ぶ自動車や謎のゲイシャなどブレードランナー的要素は手堅く押さえられているものの、こちとらついこの前に『オルタードカーボン』観たばっかなので正直またこのネタかよ!という気分です。さすがに見飽きたよ!!
傾向の似ている作品は配信時期をずらすとか、そういう単純なマーケティングもサボっちゃうのかNetflixは…(´・ω・`)
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何が言いたいのか結局
「声が出せない主人公」と言えば今年度アカデミー賞作品賞に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』とよく似ておりますが、『シェイプ・オブ・ウォーター』が言葉の無い世界をしっかり描き切っていたのに対し本作『ミュート/MUTE』では主人公が喋れないことの意義がよく分かりません。
むしろ喋れなくても特に不自由なく生きています(音声入力が使えないというだけ)。
主人公がアーミッシュ(文明を敢えて拒絶し慎ましい生活を送る教義の人々)であるという必然性も乏しい気がします…何のメタファーなんだコレ?
「ごめんなさいと言え―!」の為だけにレオに声門を与える終盤の闇医者の行動も意味不明です。と言うかそんなに簡単に手術で治るんかい。レオがどういうスタンスで生きてきたのかブレまくりです。
ポール・ラッドは良し!
敢えて褒めるところを見つけるなら、カクタスを演じたポール・ラッドは良かったですね。
今や『アントマン』としてマーベルヒーローの一角なのに、そんなのお構い無しの毒々しい演技が光る!口が達者なキャラなので登場するたびにほぼ喋り倒し。とってもイキイキしてましたねポール!やっぱこういう役が好きなのね!
逆にレオを演じたアレクサンダー・スカルスガルドは今一つでした…。
カクタスと対称的に一切喋らないので常に顔で感情を表現しているのですが、表情のレパートリーが少なく「無表情」か「ギョロ目を引ん剝く」の二つしかありません。確かにハードボイルドの主人公と言えば感情の起伏をむやみに表に出さないのがお約束ですが…あまり演技と設定がかみ合ってない印象です(´・ω・`)
あと受け容れられなかったのがダンカン監督の出世作である『月に囚われた男』を自ら遊び半分で茶化しているところ。
「私がサムだ」「私もサムだ」「私もだ」「俺も俺も!」
いくら自分の作品だからってあの名作をこんな風にイジっちゃっていいの!?作品の価値を貶めてない!?
サム・ロックウェルなんか今やアカデミー賞俳優なのに…しょうもないギャグに加担したものです。
と言う訳で期待度高かったぶんガッカリにも程がある作品でした。ダンカン先生の次回作にご期待ください!
それにしても最近のNetflixと来たら、『ブライト』と言い『クローバーフィールド・パラドックス』と言いオリジナル映画がとことん滑りまくってませんか!?頑張ってくれー!!