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『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから-』感想 恋と文学のはざまに人生の苦さを見る

「吹田のヘラクレス」ことJ君が唐突にLINEしてきました。
いわく、Netflixオリジナル映画『ハーフ・オブ・イット-面白いのはこれから-』がどちゃくそ良かったとのこと。どちゃくそ。

とは言っても、人が死なない映画は普段見ない私。
こんなティーン向けの甘酸っぱいラブコメなんか勧められたところで見やしねーよ!
おっぱいと流血シーンを持ってこい!!
…ともちろん一蹴です(最低)。

しかし、いつ明けるとも知れない外出自粛のなかスーパーファミコン版『ドラゴンクエストV』でパパス生存時にレベル99を目指す作業にも飽きてきたところ。
「まあ暇つぶしになればいいか…」
くらいの積もりでいっちょ見てみましたとさ。

 

そしたらあーた、これが本当にどちゃくそ面白いのでやんの。どちゃくそ。
ティーン向けの甘酸っぱいラブコメかと思ったら、かなりビターな味わいでむしろ文芸映画の風格。
それでいて笑いの要素は軽快で重苦しい雰囲気は無し。
非常に見やすかったです。

 

控えめに言って相当な傑作…。
こんな良い映画が誰にも評価されずにひっそりと配信されているなんて――と思ったらrottentomatoesではトマトメーター91%でした。ふつーに高評価。ワイが知らないだけだったという。

そんなこんなでかなりの拾い物でした。
良い映画だったな~…吹田のヘラクレス、侮れません。

 

 

ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから

2020年 アメリカ
監督:アリス・ウー
出演:リーア・ルイス、ダニエル・ディ―マー

主人公のエリ―・チューは、アメリカの保守的な田舎町に住む中国系の女子高生。
アジア人ってだけで周りから敬遠されるうえ本人も明るい性格ではないため、友達はいません。
ただ非常に頭が良く、特に文学系の造詣が深い。そのためクラスメートのレポートを代筆しては小遣い(&家計の足し)を稼ぐ日々を送っているのでした。
まあ、陰キャ道まっしぐらの女子です。

そんなエリーには密かに思いを寄せる相手がいました。
その相手とは筋肉ムキムキのサッカー部キャプテン…ではなく、学校で人気の美少女アスター。
そう、エリ―は同性愛者だったのです。

保守的な田舎町のこと、アジア系ってだけでなくさらに同性愛者であることがバレたら村八分どころでは済みません。
エリ―はアスターに思いを伝えるでもなく、遠くから眺めては満足する日々を送るのでした。

 

そこへ登場するのがもう一人の主人公ポール。童貞。
純朴だけど脳みそはからっきしのポールは、好きな女子相手にラブレターを書こうとするも上手くいきません。
そこでポールは成績優秀なエリ―にラブレターの代筆を頼む訳です。
「俺の代わりにロマンチックな手紙書いてよ!」と。

最初はしぶるエリ―。
しかもポールの想い人がかのアスターちゃんだったので心境は複雑…。
結局「まあ一通だけなら…(どうせフラれるだろうし)」と協力します。

 

ところがアスターからの返信で、舌鋒鋭く文面にダメ出しされてしまいます。
名作『ベルリン天使の詩』からセリフをこっそり引用したら、それもあっさりバレる始末。
打てば響くアスターの知性にますますぞっこんのエリ―は、最初は一通だけのつもりだったけど徐々にアスターとの手紙のやりとりにのめりこんでいきます。

 

その一方で、最初は見下していたポールも意外と良いヤツってことが分かってくるエリ―。
バカなんだけど、ただ愚鈍なだけじゃなくてちゃんと将来のことも考えてる。
周りの目を気にせず、いじめられている自分の味方にもなってくれる。
文学的な素養こそ無いけれど、片思いの相手に向ける情熱に自分との共通点を見出していくエリ―…。
ポールとエリ―の間には、いつしか確固たる友情が芽生えていきます。

 

果たしてポールの恋は成就するのか!?
そのときエリ―はどうするのか!?
というそんなお話です。

 

 

恋愛相談したら、実はその相談相手も同じ相手が好きでした…とはまあ現実にもよくある話。
実際、本作のプロットは監督であるアリス・ウーの実体験を元にしているとか。

そういう意味では陳腐なストーリーと言えなくもないですが、そこに「移民問題」や「LGBT」などの今日的な要素を噛ませてヒネりを加えるあたりが実にNetflix映画らしくて上手いですよね。

 

タイトルのハーフ・オブ・イットとは、古代ギリシャ哲学での「人間はもともと完璧な姿だったが、神の怒りに触れに引き裂かれてしまった。だから人間は不完全な存在なのである」という説になぞらえたもの。
愛とは、どこかにいるであろう最愛の人=自分を完全にしてくれる半身を求める行為である…というわけです。

しかしそんな都合の良い存在にたやすく巡り会える訳もなく、エリ―やポールは悩みます。
こぢんまりとした青春の一幕でありつつ、そこには苦しみ傷つきながらも他者との関わりを渇望する人間の真理が描かれています。

 

愛とか恋とか言うけれど、その本質はだれにも説明できない。
でも誰かを「好きになる」って、いろんな形があってもいいじゃない。
そんな思いを言葉でなく行動でもって描くラストシーンは非常に印象的。

印象的と言えば、ポールを演じたダニエル・ディ―マーの童貞顔もなかなか見事なものでした。
この顔で恋人の話をされてもまず信じることが出来ません。100歩譲っても現実の恋人の話とは思えません。いわゆる二次元嫁だろ、と。
今年のアカデミー賞最優秀童貞賞は彼で決まったようなものですね。

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