■■■■■■■■□□ 8点
【あらすじ】
ジョーカーやハーレクインらゴッサムシティの大物ヴィランたちが戦国時代にタイムスリップ。悪党どもが群雄割拠するハチャメチャな戦国日本を舞台に、バットマンの新たな戦いが始まる!
『ニンジャバットマン』を観てきました。
めっちゃ面白かったです!
忍者バットマン――というタイトルからしてネジが数本飛んでる話であることは観る前から明白なのですが、実際観てみると内容は一段とクレイジーなシロモノでした。
これは相当好みが分かれると思います。現にIMDbのレビューは8点以上か0点かのどちらかなので賛否真っ二つです。
本作を楽しめるか否かを分かつ最大のポイント…それは中島かずきによるブレーキがぶっ壊れた脚本を受け容れられるかにかかっています。言い換えれば『キルラキル』のノリで大はしゃぎするバットマンを見て、直観的に「楽しい!」と思うか「こんなんバットマンじゃない!」と思うかどうかです。
『ダークナイト』こそ至高!あれこそ真のバットマン!!と思われる方にはもう完膚なきまでにおすすめできません。
中島かずき無双乱舞
前述通り、本作の脚本担当は『天元突破グレンラガン』で一世を風靡した中島かずきです。
そして監督は『ジョジョの奇妙な冒険』の凝りに凝ったOPで全ジョジョファンを魅了した水崎淳平。
「中島かずきのフリーダム過ぎるインスピレーションを水崎順平がいちいち忠実に映像化する」というこの布陣はばっちりハマっており、そのおかげで観客を常時「一体どこまでやる気なんだ!?」とハラハラさせる異様な作劇が実現しました
なにしろ開始10分時点でいきなりクライマックス並のテンションです。
バットモービル→バットウィング→バットポットと次々にビークルを登場させるサービスは序の口で、さらにバットポットがアレに変形したり唐突にソレが登場したりとやりたい放題。
新たな登場人物が出てくると筆で殴り書いたような字体でデカデカとキャラクター名が表示される演出にも濃厚な中島かずき「らしさ」を見ることが出来ます。
このテンションは映画後半でもまったく衰えず、最終的にハリウッド製の映画では到底着想し得ないぶっ飛びまくりの結末になだれ込んでいました。
良くも悪くも唖然です。
シリアスな笑い
そんなこんなで、はっきり言って全編バカ丸出しです『ニンジャバットマン』。
しかしそんな雰囲気なのに劇中の登場人物達はひたすら大マジメ。結果、漫画『バクマン』で言うところの「シリアスな笑い」が大いに醸し出されていました。
たとえば映画序盤、尾張の城下町に潜入するためブルース(=バットマン)は正体を隠して変装します。
その恰好がよりにもよってフランシスコ・ザビエルのコスプレ。ブルース・ウェインともあろう者がいきなり例のカッパみたいなハゲ頭を披露します。
この時点でもう十分笑えますが、さらブルースは頭頂部にバットシグナル型の髪の毛を残してしまいます。
ハゲ頭にバットシグナルを乗せたブルースは真顔で一言「よし、これで怪しまれないぞ。」
怪しいよ!
全ッ然変装の意味ないよ!
怪しすぎるYO!!
でもブルースの言う通り、誰にも怪しまれない。変装大成功です。
セリーナやアルフレッドもこの髪型に一切ツッコミを入れません。なぜなら彼らは大マジメなのです。
こんな感じで全編ツッコミ不在のシュールな笑いが続きます。
「そんなファーマーが居るかぁ!!」のくだりとか。
もう超・独特の雰囲気です( ̄▽ ̄;)
充実のバットファミリー
アメコミにも深い造詣を持つ本作の脚本担当・中島かずき。
その特性は本作でもいかんなく発揮されています。
特にバットファミリーの充実ぶりが凄い。なにしろ一代目から四代目まで全世代のロビンが登場しています。まさかダミアンまで出てくるとは(^_^;)
ここまで歴代ロビンが揃う映画は、本流のDC作品を差し置いて本作が初めてじゃないでしょうか。なにげに快挙です。
ただレッドフード(=トッド)がヒーロー側なのはよく分かりません。最近和解したんですかね?
レッドフードだから赤い虚無僧という発想には拍手を送りたいですが。
そしてキャットウーマンがめっちゃ可愛い!
キャラクターデザインの大勝利ですね。外ハネ最高ゥ!!
vsハーレークイン戦での俊敏な身のこなしが超カッコよかったです!
これだけロビンが出てくるならバットガールやハントレスも出して欲しかったな~と思わんでもないですが、キャットウーマン一人で十分な華を添えていたのでまったく不満は無いです。
(↑ でもやっぱ戦国バットガール見たかったかも…)
ヒーローは大活躍してナンボ!
「ヴィラン大名と言う割にデスストロークたちが実質ザコ扱い」とか
「ゴリラグロッドが出るなら当然フラッシュもチラッとは出てくるものと期待したのにそんなことはなかった」とか
「蝙蝠衆の存在意義が薄い」とか
言いたいことは山ほどありますが、トータルで楽しめたのは間違いありません。
『ダークナイト』から連綿と続く「バットマンは暗くすればウケるじゃろ」というノーランの呪い。
本作はその呪いを打ち払い、暗さや小難しい心理描写は無用!ヒーローは大活躍してナンボ!!という見解をとことん追求した痛快作です。
『レゴ・バットマン』と並び「いちいち深刻がるバットマン像」から解放された傑作だと思います。
↑ こちらもバットマン映画として大傑作!
そして吹き替えも『ニンジャバットマン』と同じく山寺宏一だよ。