実話系ホラーの生々しさとスピード感溢れる恐怖演出が高い次元で融合し、近年のホラー映画のアイコン的存在にまでのし上がった『死霊館』シリーズ。
スピンオフ最新作の『死霊館のシスター』も公開中で、その関連作として過去のシリーズが全作Netflixで配信中だ。(…と思ったらなぜか『エンフィールド事件』だけこっそり配信終了してた2018年10月現在。どういうことなのNetflix)
まあそれはそうと全作傑作揃いなので、まとめて紹介してみようと思う。
死霊館
2013年 アメリカ
家督:ジェームズ・ワン
出演:ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン
平和で平凡な一家を襲う怪奇現象の数々。
一家は心霊現象の専門家ウォーレン夫妻(実在の人物!)に助けを求めるが…。
記念すべきシリーズ第一作。
予告編の時点で超怖い。
とにかくテンポよく繰り出されるドッキリシーンが素晴らしいの一言。
でっかい音で無理やりビビらせる…なんて野暮はせず、視線誘導を巧みに計算した鋭い演出が全編に渡って貫かれれている。もはや芸術の域だ。
特に「手をパチンと鳴らす」あのシーンはシンプルさゆえに恐怖がまっすぐ突き刺さる名シーンで、初見時は思わず「ほげぇ~」と変な声が出た。『ワイルドスピード』シリーズでもキレの良い演出でブイブイ言わせていたジェームズ・ワン監督のセンスがいかんなく発揮されている。
ドラマ部分も精密で、ただのビビらせホラーに留まらない貪欲さが素敵。
主役のウォーレン夫妻のみならず被害者家族であるキャロリン達の掘り下げまでもが丁寧で、家族の絆が悪霊への対抗手段になっていく過程が説得力よく描かれている。
「人間の善性vs超越的な悪意」という構図がシリーズ1作目にして早くも確立されており、伝説の始まりと呼ぶのにふさわしい大傑作だ。必見。
死霊館 エンフィールド事件
2016年 アメリカ
監督:ジェームズ・ワン
出演:ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン
数々の心霊現象を解決に導いてきたウォーレン夫妻は、再び依頼を受け奇怪な事件の調査に乗り出す。
それはのちに「エンフィールド事件」として歴史に刻まれることになる真の恐怖の序章だった…。
ジェームズ・ワン監督がふたたび繰り出した実話系ビックリホラー第2弾。
ホラー演出にさらに磨きがかかり、もはやかんべんして欲しいくらい怖い。
後の作品で主役に登り詰めた歯並びが怖い尼さん・ヴァラクも初登場。
出番は一瞬ながら「へそ曲がり男」の絶大なインパクトも必見だ。
ドラマ部分もしっかり描くという前作のコンセプトも受け継いでおり、良い部分をさらにブラッシュアップした正統派続演と言える。
傑作。
アナベル 死霊館の人形
2014年 アメリカ
監督:ジョン・R・レオネッティ
出演:アナベル・ウォーリス、ウォード・ホートン
隣人を襲った凄惨な殺人事件。そして呪いのアンティーク人形がもたらす怪現象の数々。
若い母親ミアは、想像を絶する恐怖を体験することに…。
実在の呪い人形・アナベルにフォーカスを当てたスピンオフ作品、かつシリーズ1作目『死霊館』につながる前日譚。
マンソンファミリーによる実際にあった殺人事件の要素もプラスされており、より現実の世界と地続きの恐怖感が煽られている。
母親の我が子への愛が作品を紐解くキーワードとなっており、「人間の善性vs超越的な悪意」という1作目『死霊館』が確立したスタイルを忠実に引き継いでいるのもグッド。
…とは言えジェームズ・ワン監督が一線を退き製作に回った影響は悪い意味で大きかった。
演出が全体的にモッサリしており、残念ながら全然怖くなくなってしまったのだ。
ミア役の女優もすこぶる大根なので終盤の怒涛の展開は全然盛り上がらず、むしろ茶番って感じに…。
良作ではあるけれど、本家『死霊館』の完成度には程遠い出来となってしまった惜しい作品だ。
アナベル 死霊人形の誕生
2017年 アメリカ
監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
出演:ステファニー・シグマン、タリタ・ベイトマン
娘を交通事故で失った人形職人の夫婦。
12年の月日を経て心の傷が癒えた頃、夫婦は自宅を孤児院の施設として提供することに。
しかしそれは悪魔の奸計の発端だたった…。
スピンオフ第二弾にして『アナベル 死霊館の人形』につながる前日譚…。つまり『死霊館』前日譚の前日譚…ってややこしいわ!
『死霊館』シリーズはそれぞれが1本1本が1つの話として完結しているのでどこから見始めても良いのが嬉しいですね!!!
微妙な出来だった1作目の『アナベル』とは打って変わり、完成度の高いお化け屋敷ホラーに大・進・化。
映画の序盤では小さな怪現象を積み重ねてジャブを撃ち、終盤になるにつれて怒涛のショッキング描写で右ストレート乱打!という王道スタイルが見事に貫かれ非常に良い感じでまとまっている。
しかし人間の善性が悪魔に対抗する唯一にして最大の武器である…という主張がこれまでの『死霊館』シリーズに通底していたコンセプトだったのに対し、本作は可哀そうな目に遭った人たちがさらに可哀そうな目に遭って終了という後味悪いスタイルに変貌してしまった。え、このオチでいいの?と当惑してしまう。
まあホラー映画ってそういうジャンルだけどさ。
あと悪魔がオッサンの指を一本一本念力でへし折るシーンはインパクト大きいけど、そんなに魔法攻撃力が高いならそれ使えば子ども達なんか瞬殺だろ!
わざわざカカシに憑依して鬼ごっこする必要とか全然ないじゃん!
悪魔なんだから恐怖を与えること自体が目的…と言えばそうなんだけど、行動に一貫性がなくただのマヌケに見えてしまうのは問題でしょう。
…とまあ言いたいことは色々あるけれど、1作目『アナベル』よりは断然面白いのでおすすめ。
あと怖顔の尼さん・ヴァラクもチラッと登場したり、シリーズものならではの小ネタも微笑ましいね(で、こいつ一体何者なの?)