■■■■■■■■□□ 8点
2017年 アメリカ
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド、ロバート・ダウニー・Jr、マイケル・キートン
【あらすじ】
ピーター・パーカーは赤タイツのヒーロースパイダーマンとしてご近所の細々とした事件を解決する日々を送っていた。しかし2ヶ月前、『シビル・ウォー』事件でアイアンマンと共闘したことをきっかけにピーターは自分の力を広く誰かに認めてもらいたい、あわよくばアベンジャーズの一員になりたいという強い望みを持つようになる。
折しもニューヨークの片隅では翼の怪人ヴァルチャーが一味を率いて違法武器の売買に手を染めていた。自分の実力を示すチャンスと考えたピーターは、トニーが止めるのも聞かず独力でヴァルチャーを追い始める。
一方ピーターの通う高校では最大の学園祭「ホームカミング」の開催が迫っていた。
めっちゃ面白かったです!
何が凄いってピーターがクモ能力を得た際のエピソードだのベンおじさんが死んだ顛末だのを一切省いて、いきなりピーター・パーカーの物語として始まる所です!
サム・ライミ版のインパクトから逃れられなかった『アメ・スパ』
何が一番良くなかったかと言えば、偉大過ぎるサム・ライミ版『スパイダーマン』3部作の呪縛から逃れられなかった点だと思います。
『アメ・スパ』公開当時、「あー(;´Д`)調子こいたボクのせいでベンおじさんが死んじゃったよー!」という下りをもう1回また最初から見せられるとは思いませんでした。
そりゃその部分はスパイダーマンのアイデンティティーに関わる重大なエピソードだけどさ…これこの前やってた映画と同じ内容じゃん!
何とか旧三部作と差別化しようと人気上昇中の美男美女をメインキャストに据えたりしたけど、そういう頑張った部分が逆に浮いてしまう始末。『アメ・スパ』自体は見どころ多い映画ではありましたが、ご先祖の出来が良すぎたのが同作品の最大の不幸でした。
そして若年層アピールを狙った続編『アメ・スパ2』ではギャグがことごとく滑るという更なる泥沼にハマり、配給会社諸々の事情も被って『アメ・スパ』はシリーズ自体が沈没してしまったのでした。
生まれ変わったスパイダーマン
ソニーピクチャーズの歴史的な権利譲渡(シェア)を経てめでたくマーベルシネマティックユニバースに合流した今回の『スパイダーマン:ホームカミング(以下ホムカミ)』は、そんなこんなで『アメ・スパ』の反省点を活かし徹底的に違う話になりました。
この脚本の見事さ!素晴らしすぎます!
大胆な新人抜擢で主役に躍り出たトム・ホランドの魅力も作品に貢献しまくりです。常にカエルを口の中で飼っているような表情と揶揄される彼ですが、トムホ本人のキャラクターは見かけによらず野心家のよう。このクソ生意気な感じが人気出ると見た!今後に注目ですね!
鳥をあしらった悪役のヴァルチャーに元バットマンのマイケル・キートンを持ってくるユーモアも気が利いています。最近『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と言いこのネタの仕事が多いねキートン。
※ ネタバレ警告※
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!
『ホム・カミ』の顛末
ヴァルチャーを追い詰めようとあの手この手を試すががその都度逃げられ、却って周囲の人間を危険に晒してしまうピーター。そんな彼にアイアンマン=トニーも失望し、スターク社謹製のスパイダーマンスーツを没収されてしまう。
トニーに見放されスパイダーマンスーツも失い消沈するピーター。
心を切り替えてこれからは普通の高校生として生きようと決めた矢先、 絶賛片思い中の上級生美少女リズの父親が宿敵ヴァルチャーであることが判明。しかもヴァルチャーに自分の正体も知られてしまう。
娘に話せばお前も家族も殺す。脅されたピーターは一瞬挫けかけるが、勇気を振り絞り戦う決意を固める。スパイダーマンスーツ無しで激戦を制したピーターは、ついにヴァルチャーを捕まえるのだった。
後日。トニーはピーターを見直し、アベンジャーズに迎え入れる旨を伝える。実は最初からアベンジャーズに引き入れるつもりで、密かに完全版スパイダーマンスーツを準備していたのだ。
念願が叶いトニーに礼を言うピーター。しかしピーターはその誘いを断る。ずっと誰かに認められるために頑張ってきたが、今は自分で自分を認められるようになった。だからこれからも「親愛なる隣人」として下町の平和を守っていくという決意を語るピーター。トニーはピーターの成長を喜び、去っていく後ろ姿を満足気に見送るのだった。ピーターは自分のあるべき場所にホームカミング=帰郷したのだった。
ピーターかわいいよピーター
スパイダーマンスーツ無しでヴァルチャーとの最後の戦いに挑むクライマックスはマジ燃えです。
明らかにかっこ悪い赤パーカーと黒メガネですが、それは誰かに認められるためでなく自分の正義に恥
じない戦いをするという本人の決意の現れ!
見た目かっこ悪くなって中身かっこ良くなる。このギャップに震えます。
「ホームカミング」のパーティーを前にこのまま知らんぷりで平凡な高校生として暮らすか、死ぬかもしれない戦いに臨むか迷うシーンも良かったです。そこで絶対迷わないのがキャプテン・アメリカとかですが、迷うからこその等身大のヒーローであるスパイダーマンなんだね!
トニーの父親役っぷり
少年の成長物語と言えば、未熟な主人公を見守る父性の視点が欠かせません。本作ではそれをトニー・スタークが担っているのが面白い。なにしろトニー自身が未熟な大人の代表選手だからして、当の本人がこの役割に一番戸惑っているからです!
それでも最後はピーターの成長を「承認」するって役を果たす所にトニー自身の成長も見られます。
ウルトロン騒動しかり、これまでのシリーズでは人間性の脆弱さに付け込まれることが多かった社長ですが、今やアベンジャーズ最古参メンバーとして若手を見守る立場なのですね。
ピーターは『シビル・ウォー』の時にキャプテンアメリカの盾を一瞬奪ったことをえらく誇りにしているようで『ホムカミ』劇中でも折につけてそのことを自慢していました。
が、調子こくピーターにトニーは「彼は手加減してくれてたんだ!」と一喝します。「アイツが本気出したらお前なんか敵う訳無いだろ」という訳です。
『シビル・ウォー』で完膚なきまでに壊れたトニーとキャップの友情ですが、トニーからキャップに対してはまだ熱いリスペクトが感じられます。『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』では彼らはどうなってしまうのか!?キャップは盾を取り上げられたままなのか!?興味尽きません!
ティーンエイジャーの皆様
ネッド大活躍でしたね!よっ椅子男!
ピーターが自分の正体を知る誰かと協力するというのは新機軸ですね。『ホムカミ』が過去のスパイダーマンシリーズと全然違う空気なのはなにげにネッドの存在が大きいと思います。
演じるのはゼンデイヤ。全然知らんでいやって感じでしたが、アメリカでは超有名なアイドルらしいですね。
スパイダーマンシリーズにおけるヒロイン「メリー・ジェーン」とは別人ながら、ミシェルの愛称が「MJ」であるという事実が最後に明かされる仕掛けも憎い。今後も重要キャラとして登場すること必至です。
対して今回のヒロインであったリズはまあ…役回り的に本作限りでお役御免でしょう。
これほど主人公に約束反故にされまくるヒロインも珍しい。かわいそうでした。
これほど主人公に約束反故にされまくるヒロインも珍しい。かわいそうでした。
大切な人のお父ちゃんが実は宿敵だったよー!という展開はスパイダーマンシリーズが毎回やる言わばお約束ですが、どういう訳だか今回は全く読めませんでした。だからリズを迎えに行ったらマイケル・キートンが出てきたシーンはびっくりし過ぎて声出ましたワ。
人種が違うという先入観を逆手に取った見事な仕掛けです!
人種が違うという先入観を逆手に取った見事な仕掛けです!
あとマリサ・トメイの隙だらけ美熟女ぶりも愉快でしたね!ラストシーン、あの後どうなるんでしょう!?