映画

『スプリット』感想 ラスト5秒の衝撃!完全にやられた! ※ネタバレあり

2017年 アメリカ
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:アニャ・テイラー・ジョイ、ジェームズ・マカヴォイ

【あらすじ】
パ―ティーの帰り道で3人の女子高生が突然見知らぬ男に拉致され、地下室と思しき部屋に監禁される。
乱暴される気配は無いが、男の目的は不明。しかも男は姿を現すたびに性格も口調も服装もまったくの別人に変貌する多重人格者だった。
3人の女子高生はこの窮地を脱することは出来るのか!?
※ひとまずネタバレ無しの感想


やられました。

シャマラン史上もっとも度肝を抜かれたラストでした。
M・ナイト・シャマランと言えば1999年に『シックスセンス』の大ヒットで一世を風靡するも、その後は『アンブレイカブル』や『ハプニング』などリアクションに困る珍作を連発しキャリアがどん底まで低迷した「過去の人」です(ごめん辛辣で(´;ω;`))。
そんなシャマランが反撃の狼煙を上げたのが2015年『ヴィジット』でした。流行り過ぎて当時すでに飽きられつつあったPOV形式(偽ドキュメンタリー風)の映画ながら、恐怖と笑いの見事なバランスでむちゃくちゃ尖った個性を発揮した快作でした。

ヴィジット (字幕版)
そしてシャマランの進撃は止まらず本作『スプリット』も大好評。
本当に評判が良かったのでレンタル開始を心待ちにしていたんですよね。実際観てみたら期待を大幅に上回る驚愕のエンディングで大満足でした!
おすすめです!
ちなみに本作はかなり「怖い」です。
思えば『シックスセンス』の時も、ゲロ少女が突然テントの中に出現するシーンはおしっこちびりそうでした。シャマランはホラーのツボが分かってますよね。苦手な方は注意!

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23人の人格を持つ犯罪者という、あからさまにビリー・ミリガンを意識した悪役の誘拐犯。
本作は彼を演じたジェームズ・マカヴォイの魅力によって成立していると言っても過言ではないでしょう。『フィルス』や『トランス』などイッっちゃってる人の役が多いマカヴォイですが、本作の誘拐犯は彼のフィルモグラフィの中でもダントツの最凶キャラです。
なにしろ怖い。あるときは潔癖症、あるときは少年…。人格の変容が冗談やフリではないことが一発で分かる迫真さで、ストーリーのテンポと説得力に大きく貢献しています。
それでいて笑いの要素も一手に引き受けるという芸達者ぶり。「誰か女性が来た→女装したマカヴォイでした」のシーンは爆笑です。中盤のむちゃくちゃダンスも素敵。
わざとらしいと言えばわざとらしいのですが、多重人格の表現が稚拙だと一気に作品全体の格が落ちていたでしょう。マカヴォイの演技に乾杯です。

 

※ ネタバレ警告※ 
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

衝撃のジャンルスイッチ映画

誘拐犯の正体は、解離性同一性障害をこじらせすぎて人間を超えた本物の怪物「ビースト」でした。
重力を無視した挙動で壁や天井をはい回り、銃弾でも致命傷を与えられない頑強さを持つ異形。女子高生誘拐は彼の誕生を実現させるための一種の儀式なのでした。
3人の女子高生のうち2人は惨殺(捕食)されるも、1人は果敢に反撃。その勇気が幼少期から虐待されていた事実に根差していることが判明し、ビーストは彼女を自分の同類と認め殺さずに去って行くのでした。
と言う訳で本作のビックリポイントはサイコスリラーとして始まりつつ途中からモンスターホラーにジャンルが変わる所なのでした。
このビックリ度は正直…75%くらいでした。まあ確かに予想外の展開で面白いっちゃ面白いけど、もうひとオチあっても良かったかな~くらいの気持ち。
しかし本当の衝撃はこの後やってくるのです。

観客の意識を精確に射貫くラスト5秒

ラストシーンで、多重人格者ビーストが連続殺人を犯して逃亡中であることが報道されます。
そのニュースを深刻そうに聞くのはなんと…ブルース・ウィリス!?まさか過ぎる、『アンブレイカブル』の何やっても死なない無敵ハゲの登場です!!

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シャマランは前述の通り『シックスセンス』で一発当てた後はキャリアが低迷していました。映画の出来は個人の好みによるものですが、最低映画賞ことゴールデンラズベリー賞を複数回受賞してしまった事実からも世間一般でシャマランが一発屋扱いだったのは間違いありません。
そこに来て本作『スプリット』は敢えてキャリア低迷期の珍作『アンブレイカブル』と世界観を接続しています。
「そこのお前!いま俺の事『シックスセンスだけの一発屋』だと思っただろふざんけんなよ!俺の本当の実力を思い知らせてやる!」という反骨の意識が如実に見て取れます。

当然、心のどこかでシャマランを一発屋と侮っていた観客に見事に刺さります。そうです、私です。完敗です。完全に見透かされています。やられましたビックリ度120%です。
これはいわば自分の映画キャリアをネタにした壮大かつ自虐的なオチです。こんなオチが描けるのはハリウッド広しと言えどシャマランだけでしょう!見事!

続編企画が進行中!?

と言う訳で本作の真のオチは「実は『アンブレイカブル』の続編であること」でした!
しかも更なる続編が企画中のもよう。ヒーローとしての自覚に目覚めた頑丈ハゲのブルース・ウィリスと、無敵多重人格者のジェームズ・マカヴォイががっぷり4つに組んだバトルを展開する…かどうかは不明ですが、今度はどんな手を使って驚かせてくれるのか今から楽しみです!
もういっそのこと過去のシャマラン監督作をどんどん繋げてみるのはどうでしょう!?
大人になって霊界探偵やってる『シックスセンス』のハーレイ・ジョエル・オスメントとか、バットで悪い宇宙人を退治して回る『サイン』のホアキン・フェニックスとか、汚物系ラッパーとして大成した『ヴィジット』の弟君が出てくるとか。だめ?



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