※2018年6月20日 記事更新しました
おすすめ度
■ ■ ■ ■□ □ □ □ □ □ 4点
【あらすじ】
墜落した宇宙船に乗っていた宇宙人から不思議な力を持つ「リング」を託された青年ハル・ジョーダン。それは自らヒーロー「グリーンランタン」となり、超越的な力で銀河の平和を守るという宿命だった。
折しも地球には最凶の侵略者が来襲。
なりたて銀河警備隊員のハルは地球と愛する人々を守ることができるのか!?
目次
伝説の失敗作
『ワンダーウーマン』好調を機にDCコミックス映画を見直してみようシリーズ⑤!
本作は本来DCエクステンデッドユニバースの起点になるはずだったのに、大コケにコケたせいで企画自体が白紙に戻ったという伝説の失敗作です。
しかし内容は底抜けに明るく敵も味方もアッパッパー。面白くないんだけどどこか憎めない独特の雰囲気があります。
個人的には『バトルシップ』あたりと芸風が近いと思います。
と言うか本作主演のライアン・レイノルズがヒット作『デッド・プール』『デッド・プール2』で思いっきり自虐ネタに使っているので、妙に知名度が上がってネタ映画として唯一無二のポジションを確立するに至っています。
と言う訳で今回は、そんな『グリーン・ランタン』の魅力を再確認してみようと思います。
ネタバレ満載なのでご注意ください(あまりネタバレを気にするような映画ではないと思いますが、一応(;^ω^))
ここが変だよグリーンランタン
主人公がバカ
主人公ハルの本職はテストパイロット。
彼の大胆かつ勇敢な性格のプレゼンテーションとして、本作序盤では戦闘機同士のカッコいい空戦シーンが導入されます。いわゆる「ツカミ」ですね。
しかし彼はテストの趣旨を理解していない珍行動を取り、結果数億ドルするであろう最新鋭戦闘機をいきなり墜落・大破させるという大不祥事を繰り出します。
本人はちゃっかり脱出。
その後当然上司に怒られてあっさりクビに。
せっかくのツカミなのに何一ついい所をアピールできておらず、「大胆かつ勇敢な性格」どころか「単なるバカ」という印象しか抱けません。
開始10分でコレなので、早くも観客を暗澹たる気分に叩き落します。
豆腐メンタル
いろいろあって銀河警備隊「グリーン・ランタン」の新入隊員となったハルは、さっそくその本拠地である惑星オアに行くことに。
そこで彼は先輩グリーン・ランタンの面々と出会い、新入隊員としての心構えを説かれます。
そして実戦経験ゼロのハルに対し、先輩グリーンランタンによる訓練が始まります!
…と思いきやハルは
「なりたくてなったんじゃないやい!」
と駄々っ子のようなことを言い出し、先輩のシゴキに6分でギブアップ。早々に地球に帰ってしまいます。
まるで「初日にバックレるあり得ない新入社員ネタ」です。
しかもパワーを返上するならまだ理解できますが、なんとハルはちゃっかりリングを着服したまま逃げ出します。
「初日に出勤してそのまま辞職したけど、オフィスのパソコンは自分のものだと思って持って帰る新入社員」のような図々しさです。
ツッコミどころの乱打で観客を当惑させ続けるハル。
人間小さい!
超人的な根性の無さでそそくさと地球に逃げ帰ったハルでしたが、例によって緑パワーはちゃっかり保持したまま。
で、着服したスーパーパワーで何をするかと思えば友人の前で変身して自慢したり、スーパーマンよろしく美女を連れて空の散歩したりと、完全に私利私欲で好き勝手し始めます。
どうせならもっと大胆にすれば良いものを、いちいちやることがセコいハル。
「訓練は受けたくない」
「でもスーパーパワーで好き勝手したい」
という『大いなる力には大いなる責任が伴う』系スタンスとは真逆の方向へ全力疾走していくハル。君はどこへ行く気なんだ。
気の毒すぎる中ボス
ハルがフラフラしている間、宇宙の凶悪犯「パララックス」が長き封印から解き放たれ地球に向かって侵攻し始めます。
パララックスは気弱な秀才・ヘクター博士に憑りつき、自分の力の一部を分け与えて手下に仕立て上げます。このヘクター博士がいわゆる中ボスポジションのヴィランという訳です。
しかし彼、まったく手強い印象はなくむしろひたすら可哀想です。
なにしろパララックスに憑りつかれて以降
・幻聴がする
・頭痛がする
・頭部がどんどん肥大化してバケモノみたいな外見になる
・自力で歩けなくなるほど衰弱する
という散々な苦しみを強いられ常人以下のスペックに(一応弱々しい念力が使えるけど)。
アメコミ映画史上類を見ない、主人公の知らない所で勝手に弱り切っているヴィランですヘクター博士。
あげく最後は「しくじったな~、ゆるさ~ん」と上司であるパララックスに粛清されてしまいます。
哀れな姿をさらしただけで、物語にいかなる寄与もしていません。
…このひと何しに出てきたんだ?
弱すぎるラスボス
満を持して地球に君臨するラスボス・パララックス。
かつて百戦錬磨のグリーンランタンを何人も血まつりに上げ、総力を結集しても封印するのがやっとだったという最強の敵です。
グリーン・ランタン本隊の応援が得られず、ハル一人でこの難敵と対峙しなくてはならない。
そしてハルは6分しか訓練を受けておらず実戦経験もほぼゼロなので、いわばレベル1状態。
スライム相手に数ターンかかる新米勇者がいきなり魔王に挑みかかるが如き無謀さです。
勝目はあるのか!?
……
………
…………
→あっさり勝ちました ヽ(・ω・)/ズコー
なんで!?
「なぜ勝てたか」を説明する勝利のロジックは特になく、特に工夫もなく地道にダメージを与えたら倒せましたよ。
え、でも、ほんとなんで!?
だって6分しか訓練受けずにあとは遊んでたんだよ!?
パララックス弱すぎじゃない!?
つづく!
万一にそなえて禁じられたダークサイドの力を解放させていた先輩グリーン・ランタンのシネストロ。
案の定ダークサイドに取り込まれる様子が示唆され映画は終わっていきました。
つづく!
ウソで~す続きませ~ん!
打ち切りで~す!!
ライアン・レイノルズ先生の次回作にご期待ください!
『グリーンランタン』は何を生んだか
と言う訳で、駄作は駄作でも愛されボディの駄作である『グリーン・ランタン』。
ネタとしてイジり甲斐があるのはもはや公然の事実らしく、『グリーン・ランタン』は以後各所でネタにされまくりました。
2012年『テッド』
『グリーンランタン』の翌年に公開された、しゃべるぬいぐるみテッドが下ネタを言い続ける大ヒットコメディ。
登場人物の一人が「俺のおホモだちを紹介するぜ!」と言っておもむろにライアン・レイノルズ登場。
男同士の熱いディープキスを唐突に披露するのでした。
「グリーンランタンが男同士でベロチューしてる!」とテッドが愕然とするくだりが涙を誘います。キャリアどん底のライアンに鞭打ちまくりです。
本作は他に『スーパーマン:リターンズ』主演以降仕事が無いブランドン・ラウスもおちょくっています。DCコミックスに何か恨みでもあるのかよ!
2014年『荒野はつらいよ ~アリゾナより愛をこめて~』
上の『テッド』と同じセス・マクファーレンが手掛けた西部劇コメディ。
またもおもむろにライアン・レイノルズが登場し、2秒でリーアム・ニーソンにブッコロされます 。
厳密にはグリーンランタンネタではないのですが、もはやグリーンランタンを通り越してライアン・レイノルズをいじるのがひとつの文化みたいになっています。
2017年『レゴバットマン ザ・ムービー』
ジャスティスリーグの結成記念パーティーに自分だけ呼ばれていない!といじけるレゴのバットマン。
そんな彼をレゴのグリーン・ランタンが慰めます。
「大丈夫、僕も手紙なんて受け取ってないよ。もう何年も・・・もう何年もね!」
『グリーン・ランタン』の記録的な大コケで映像化企画からは完全に干されている彼。
涙なくしては笑えない切実な自虐ネタです。もはや不人気ヒーローの代名詞か。
2016年『デッドプール』
オゲレツおしゃべりヒーロー、デッドプールが活躍するバイオレントなヒーロー映画。
『グリーン・ランタン』が大コケにコケてキャリアのドン底を舐め尽したライアン・レイノルズが、再起をかけ原案・脚本・主演を全部自分でこなした苦心の一作。
そしてすべてのヒーロー映画の一次元上を行く奇跡の快作です。
劇中でもライアン・レイノルズがやたらに緑を嫌がったり、そもそもオープニングクレジットで思いっきりグリーン・ランタンが映りこんだり、本作のメタ的な位置づけは敢えての超露骨スタイル。
『グリーン・ランタン』の失敗がなければこの傑作は生まれませんでした。
ある意味『グリーン・ランタン』の続編とも言えるでしょう。
2018年『デッド・プール2』
俺ちゃん第2弾。
今度は未来からやって来たサノスケーブルと大乱闘!
エンドロール後にで抱腹絶倒の「緑色ネタ」が用意されています。
カナダよ、礼は要らねえ!
詳しく書くとネタを割っちゃうのでアレですが、この『デッド・プール2』をもってライアン・レイノルズは自分の持ち弾である「グリーンランタンネタ」と訣別しています。
さよならグリーンランタン!
どうなる新作!?
2020年の公開を目標に企画が浮いたり沈んだりしている新作『グリーン・ランタン・コァ』はどうなるのか!?
今後も目が離せませんね(適当)。
『グリーン・ランタン』はNetflixで配信中です!
DC映画についてまとめてみたこちらの記事もよければどうぞ!