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『ゴッドレス/神の消えた町』感想 Netflixオリジナルの本格西部劇 中盤ダレるが怒涛の最終回は必見!

■■■□□ 8点
【あらすじ】
開拓時代、アメリカ。
女子供にも容赦しない残虐な強盗団のリーダーは、団の金を奪って逃げた裏切り者を追っていた。
一方、過酷な環境の村「ラ=ベル」で暮らす人々のもとに重傷を負った謎の青年が現れる。
美しくも残酷な荒野を背景に、それぞれの運命が動き始める。

Netflixオリジナルの正統派西部劇『ゴッドレス/神の消えた町』を観ました。面白かったです!
上にも貼ったオープニングからしてまずカッコいい!!

特定の主役を設定せず、複数の登場人物に順番にスポットが当たる本作。いわゆる群像劇ですね。
ただこの群像劇スタイルが裏目に出ている部分もあり、各登場人物のエピソードがそれはもうゆ~~っくり、た~~~っぷり描かれるので中盤の中だるみのキツいことキツいこと…。正直あまりの退屈さに「もう見るのやめよっかな…」と何度かよぎりました。
しかし張り巡らされた複数のエピソードが運命の決戦に向け一本に収束していく後半は圧巻。
最終回ではこれまでの鬱憤を晴らすがごとき怒涛の伏線回収&バイオレンスで凄まじいカタルシスでした。ラストシーンの美しさも鮮烈!
テレビシリーズでありながら続編作る気ゼロの潔すぎる姿勢もあっぱれです。
中盤のダレ方が本当にキツいので手放しではおススメし難いですが、観終わった後の満足感は高いと思います。西部劇好きはぜひ!

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立ち上がれ女性!

近年の西部劇のヒット作は『ジャンゴ/繋がれざる者』と言い『ヘイトフルエイト』と言い『マグニフィセント・セブン』と言い、史実では虐げられていた黒人が大活躍する作品が目立ちます。
抑圧された魂が反撃に出る姿は万人の心を打つ普遍的なモチーフだということでしょう。

ジャンゴ 繋がれざる者 (字幕版)
一方本作『ゴッドレス/神の消えた町』でフィーチャーされているのはザ・女性です。
なにしろ舞台となるラ=ベルの町は、鉱山事故で働き盛りの男性だけ全滅し残ったのは若造と老人を除いて全員女性という、過酷な西部にあってはまさに神に見捨てられたような土地。そんな設定を活かしつつ、やはり史実では地位が高くなかったであろう女性達が敢えてのメインキャラに据えられているという訳です。
しかし本作に登場する女性たちは全くもってたくましい!従来の西部劇に見られるような「守られる係」「恋愛要素担当」的なステレオタイプなキャラ付けでは決してなく、強調されるのは自らの力で運命を切り開いていく雄々しい姿です。むしろこのたくましさこそが本作のテーマの一つでしょう。
特に主人公格の一人であるメアリーの存在感は出色。
いわゆる美人ではなく、むしろ見た目は仏頂面で可愛げの無いオバさん。しかし抜群の銃の腕前を持ち、自分の居場所は当然自分自身で守るという自立心にあふれたその佇まいは非常に魅力的です。しかも仲間想いで情に厚く、性欲さえも女性同士で何とかしてしまいます。アニキィ!
同じく主人公格のアリス・フレッチャーも素敵。
洪水に流されたりマワされたり夫を二度も亡くしたりと散々過ぎる人生を送ってきながら、現在は一児の母として不毛の地でたくましく独立独歩を貫いているという肝っ玉母ちゃん。
謎の流れ者ロイをかくまったことで彼女の運命も動き出していく訳ですが、そのロイと傷ついた人生同士で共鳴していく様子がグッときます。
ロングスカートを風になびかせながら泰然とライフルを構える姿にシビれる!

男も負けてないぜ!

残虐な強盗団の首魁、フランク・グリフィンも存在感ありましたね。彼もまた主役の一人でした。
なぜそこまで悪の道に堕ちたのか、なぜそこまで神(=人間の善性)を信じないのか…その辺りは一応掘り下げられるのですが、もうキャラがどうとかの前に画面に出てくるたびに胸糞悪い何かが起きるので不快感はメガマックス。とにかく見事なクソ野郎ぶりでした。
演じているのはジェフ・ダニエルズ。私の中で彼は『Mr.ダマー』のハリーのイメージしかないので、本作での血も涙もない悪逆非道っぷりはむしろギャップが強烈でした。

ジム・キャリーはMr.ダマー (字幕版)
そんなフランクに息子同然に育てられた凄腕ガンマンのロイ・グッド。
最初は完全に謎の人物なので影が薄いですが「あの手紙は何なのか」「なぜ木彫りの銃を大事にしているのか」「なぜフランクのもとを去ったのか」などが明かされるにつれ、この物語の主人公としての姿を徐々に現していきます(ここが「徐々に」過ぎて退屈なのは否めませんが…)。
後半に満を持して披露する拳銃さばきは往年のジュリア―ノ・ジェンマを彷彿とさせるキマリっぷりで超かっこいい!あの拳銃を手のひらでクルクル回すやつ、真似したくなること請け合いです。
悪vs善
父vs子
罪vs贖罪
ロイとフランクの決着には様々な意味が込められており、その結末が何をもたらすのかが観る者を強く惹き付けていきます。
他の男性キャラもみんないい味出してました。凄腕だけど近眼に悩む保安官のビルや、イケメンなのに体臭キツい保安官補ホワイティなど。
終盤出てくる探偵なんか出番少ないのに本作唯一のギャグ担当として凄いインパクトでしたね。ラストはめっちゃカッコいいし。
自らの運命に立ち向かう勇気に男も女も無いってことね!多分!

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