■■■■■■■■■□ 9点
2016年 イギリス
監督:ジョン・カーニー
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボイントン、ジャック・レイナー
【あらすじ】
1980年代のアイルランド、ダブリン。
不況のあおりを受けてガラの悪い底辺校に転校させられたコナーは、モデル志望の女の子アンに一目惚れ。彼女の気を引くため仲間を集めてバンド活動を開始する。音楽を通じ、コナー達はかけがえのない夢を手に入れていく。
Netflixで『シングストリート 未来へのうた』が配信開始!せっかくだから俺はこの映画を紹介するぜ。
超不景気だった80年代ダブリンが舞台なだけに、人生のままならなさや希望の見えない将来への不安が全編にズンと通底します。しかしおしゃれな笑いが適宜挟まれるので無暗に湿っぽくならず、むしろ『テイク・オン・ミー』など超有名ヒット曲の小ネタが軽快。結果、暗い現実を明るく描くさわやかな青春ドラマに仕上がっています。
このバランス感覚はすこぶる見事ですね!
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そんな鋭い感性を持つ本作の監督はジョン・カー二―。
過去作『ONCE ダブリンの街角で』(2007年・アイルランド)ではままならない現実を音楽と共に乗り越える男女を描き、『はじまりのうた』(2013年・アメリカ)ではままならない現実を音楽と共に乗り越える男女を描いていました。本作『シングストリート』ではままならない現実を音楽と共に乗り越える男女が描かれています。
めちゃくちゃ作家性が明確な監督ですね。
夢を追う!
突然ですが私は夢を追うことを手放しで肯定する映画は大ッッ嫌いです。
本人にもいろいろ事情はあるだろうに、当初の志を変えることを勝手に敗北扱いし非現実的なほど高い目標を良しとする風潮には本当にヘドがでます。それで本人やその周囲の人間が本当に幸せなのかを吟味することなく、思考停止して「夢!」「追う!」「正義!」みたいに主張する連中。心底なぎ払いたいですね。
映画で言うなら『THE有頂天ホテル』の香取くんとかですよ!
その点本作『シングストリート 未来へのうた』は前述通り人生のままならなさをイヤってほど描き込んでいるので、夢追い映画ではあるもののその重さが違います。
ラストシーンに降るあの雨はコナーの人生は決して楽なものにはならないことを予見した演出なのです。
でも進む。そんなことは百も承知でただ前に進む。
それが若さ。そしてそれが青春。
音楽という絵具で見事な青春賛歌を描き上げた本作にはただただ脱帽です。夢を追うその素晴らしさはそのまま人生の素晴らしさでもあり、この映画を観る誰の心にも深い共感をもって響くでしょう。
もはやサントラが本編
という訳で楽曲の数々は本作において最も重要な要素。ある意味サントラが本編です。
全曲素晴らしいのですがやはり何と言っても12トラック「drive it like you stole it」が至高。本編でこの曲が使われたシーンが本当に良かったんですよねー!
何もかも上手くいかない日々の中、それでもプロムに向けてバンドのリハーサルを始めるコナー達。曲が始まると誰も居なかった学校のホールに人が満ち、現実の問題が全て解決しててみんな明るく笑っている。でも曲が終わるとまた空っぽのホールに戻っている…。
本作を象徴する最高の名シーンです。おかげで「drive it like you stole it」聴くたびに涙垂れる( ;∀;)
他にもエンディングテーマ「Go Now」も素敵。
歌うのはマルーン5の超絶イケメン、アダム・レヴィーン。さすがの歌声でこれも泣ける( ;∀;)
サントラ買っても絶対損しないと思いますが、曲を聴くのが目的ならAmazon Music Unlimitedの方が断然おすすめ。アルバム一枚買うより明らかに安く済み、かつ他の映画のサントラも数多く聴けます!